利用者啓発の試み
離職率の高い職業
現在、介護・福祉の現場においては深刻な人材不足が続いています。
その理由の一つとして、介護・福祉の業務を行う現場の職場環境が整備されていないことにより、就業者が耐えられずにすぐに離職をしてしまうということが挙げられます。
確かに介護・福祉の現場では力仕事や下の世話といったようなあまり進んでやりたがるような仕事ではないものも多くありますが、そればかりが原因ではありません。
そこでそのような離職率の高さを少しでも食い止めるために各市町村で取り組みがされているのが「利用者啓発」という方法です。
利用者啓発とは、簡単に言えば施設の管理者や職員ではなくそこを利用する人たちに対して、ルールやマナーを守ってもらうことをお願いするという運動です。
これまでは利用者は「お客様」」であることからそうしたお願いはそもそも失礼なことで口にしてはいけないかのような雰囲気もあったのですが、実際の現場においては一部のルールやマナーを無視した利用者が貴重な人材である職員たちを追い詰め、離職を余儀なくしているという実態もあり看過できなくなってきたということでしょう。
理不尽なクレーム
利用者啓発のきっかけになったのは、介護保険を利用して施設を訪れる人の中には、理不尽なクレームをしつこく繰り返すということが頻繁に報告されるようになったことです。
介護保険の利用は国家政策として国民が有する権利ではありますが、だからといって職員が利用者の言いなりにならなくてはならないという意味ではありません。
介護保険の利用は法によって定められる制度であるため、利用可能な範囲というのは決まっているのですが、それを誤解して何もかもを施設に要求するというケースが散見されています。
そこで、利用者啓発のため制度上ではどこまでが行えるもので、どのような行為になるとルール違反であるかということをわかりやすく説明したチラシを配布するなど対策が行われています。
ですが、いわゆるモンスタークレーマーとなるような利用者はそもそもそうしたルールやマナーを理解しようとする気がなかったり、あるいは日々の鬱憤を職員にぶつけるためにやっているといったこともあるので、実際には画期的な効果が上がっていないというのが実情です。
そこでより進んだ取り組みとして、そうした理不尽なクレームに対しては個々の施設で独自に対応をするのではなく、専門のチームを組んで対応できるように窓口を設けるようにするといった動きも始められています。