現状と課題
介護福祉の問題点
社会福祉のなかでも最も深刻なのが高齢者に対する介護福祉です。
日本においては数十年も前から少子高齢化という問題は議論されてきたのですが、従来までの日本的価値観においては「高齢者は家族が最期まで世話をするのが当たり前」という考え方が根強く残っていたことから、高齢者に対する福祉政策は驚くほど先送りをされてきたという実情があります。
戦後日本国憲法に「生存権」が記載されたことにより、その権利に基づく「福祉六法」は成立しましたが、高齢者に対応する施設である老人ホームのような場所の整備は高齢化のスピードに対してあまりにも遅すぎる対応となっていました。
そこで1970年(昭和45年)に急遽政府は「社会福祉施策緊急整備5か年計画」と称して施設の自増設や援助の増員を行うようになりました。
しかしそれでも人口の高齢化は進む一方であり、寝たきりや認知症といった自立した生活が全くできなくなってしまう高齢者も急増してきたことにより、現在もそれに対応できる決定的な政策がとられずにいるのが現状です。
社会福祉が進まない要因
社会福祉における政策が進まない背景には、福祉の専門職の養成・確保が進んでいないということが大きな要因があります。
従事者に対して継続的な研修や介護技術の向上を図っていくことも大切なのですが、それ以上に介護や福祉という仕事に従事したいという人材が必要な数集まらない・定着しないということが大きな問題となっています。
その理由としては介護労働の負担があまりにも大きいということや、労働環境の整備が他の分野に比べてかなり遅れていることが挙げられます。
さらに近年では、介護の分野においては単純に「世話をする」ということから一歩進んだ、要介護者への自立支援や自己実現が可能となるような活動が求められてきていることもあり、介護職への従事者に高い能力が求められるようになっているということも関係しています。
そのためこれからの介護政策を考える上においては介護福祉サービスを充実させるとともに、関係者が連携をして要介護者へのニーズを充足させ、かつ介護を行う人材に対して十分な環境整備をしていくという、かなり高いハードルを超えなくてはいけません。
ですがこれらの取り組みは少しずつ実を結びつつもあり、地域や産業界が一体となった新しい介護の形が形成されてきています。